「『タダ』モデルはいつまで恩恵を受けられるのか」


 「テンポス精神17か条」の第5条に、『上司が嫌なら店を替われ、そこでもいやならまた替われ。何度でも替わってみろ。テンポスはフリーエージェント制だから。だがそのうち気づくだろう。理想的な上司や職場などないことを。自分で切り開いたところにしか「やりがい」はないということを。店長は、気に入らない、使いにくい部下は他の店に放り出せ。テンポスはドラフト制だから自分の納得のいくまで何回でも人を入れ替えろ。だがそのうち気づくだろう。理想の部下などいないということを。』
 上記は、(おもしろい会社研究、松室哲生 著、日経プレミアシリーズ)に書かれていたテンポスバスターズという会社の紹介で、2002年JASDAQに上場し、以後、成長を続け118億1000万円(2008年4月期)の売上で、業務用リサイクル市場での業界ナンバーワンの地位を占めているそうです。
 他社とは言え、それを社員に会社の精神として伝えているわけですが、これは会社についても言えることだと思います。ある不動産販売の社長の言葉を思い出すのですが、「うちにはいい社員が来ない」。ではいったいどんな社員がいいの、となるのですが。結局経営者自身の判断でいい社員かどうかが決まるのです。大企業との比較になってしまいますが、しっかりした組織があり、体制があれば、極端に言えば誰が社長になっても、会社は維持できる。それくらいの会社であれば、最終判断は社長がするにしても、採用の基準は人事部だろうから、それほどぶれないのではないかと思います。
 中小の会社はそうは行きません。社長の姿勢がすべてといってもいいくらいです。組織といっても社長の考えで決まるし、体制といっても社長の考えた体制なんです。社長が退いて自分の子供を社長にしたケースを身近で見ていますが、まだ若くて30代の社長が誕生したのです。そうしたら、その30代の社長の思いで会社は動いて行きます。そこで弾かれた人材もいます。きっとその社長も自分の思い通りにしたいのだと思います。
 理想的な上司や職場などないということ、理想の部下などいないということを「テンポス精神」が言っていますが、この精神は、おそらくこの会社の社長が経験してきたことのすべてだと思います。人は経験しないとわからないというのが私の考えです。気に入った部下であり、上司という、そんな人はどこを探したっていないです。
 大企業などの組織の大きい会社、体制のできている会社では、制度、人事考課、評価、試験、というもので人事、役職がある程度決められていると思いますが、そういう制度や評価で上司、部下の組織が出来上がっていても、すべてがいい上司、いい部下という関係ができているわけではないですね、いかがでしょうか。それでも会社が維持されているとことに会社の組織の強さがあるわけです。大企業とは、そういうものではないかと思います。
 中小の会社はそうは行きません。資金力、財力、人材、信用、規模、売上、資産、知名度、体制、組織どれをとっても満足なものはないのです、その中で戦うわけです。そうなると、今できることを最大限利用すると言うのが私の結論です。大事なのは今の戦力でどう戦うかだと思っています。いくら人材を求めてもそう簡単に集められるものではありませんし、今がベストの人材と考えることが一番だと思います。これで戦略を練ることが重要で、これで売上を上げることを考えますし、それが難しければ、いかに生き延びるかを考えればいいわけです。
 23年間の経営は運のよいことが大半ですが、これから先もそれを保証するものはありません。改めて思い返しましたが、創業時から23年間、あと何年頑張ろうなどと思ったことは一度もありません。何年やれるかなんて想像もできませんでした。単に目の前の仕事をこなしただけです。それは「愚直なまでにやる」精神、これがナビックの精神です。
 ホリエモンについての記事の中で、刑務所での過ごし方で、この先あと何ヶ月、何年刑期がある、という考え方はしないで、もう何ヶ月終えた、これで何年終えたと考えるほうが楽になれる。そんなことが書かれていました。先が見えない今日だからこそ、この先どうするかを考えるより、今を生きるという考え方のほうを求められる気がしています。なにしろこの先どうするか考えてもわからないのですから。