「8月24日」

 8月24日はナビックの創立日である。子供の誕生日と同じにした。それだけなのだが、開設の日というのには、こだわりがあった。それはやはり長く企業が繁栄することを願う思いからだろう。昭和63年から平成14年まで、丸14年が経ってしまったが、今会社が存続しているということを、私は幸せに感じる。人間であれば、かなり成長しているに違いないが、ナビックというこの会社はどれだけ成長したといえるだろうか。ただただつぶれないようにと、走ってきただけかもしれない。
 当時は、一人で始めたわけだが、将来がどうなるかなんてわからないのだから、ベンチャーには違いなかった。スタートが同じでも結果が違う会社は沢山ある。売上規模、従業員数、どれをとっても当社をはるかに凌ぐものがあるかと思うと、なくなってしまった会社も当然ある。すごく儲かったなという思いをしたことなど一度もない。そのかわり大変な損をしたということもない。社長だから、ということで、いい思いをしたという記憶もない。いつも問題がついてまわっている。「人」、「仕事」、「お金」これはいまだに何一つ解決していない。
 「人」---技術者が必要だが、給料を払って沢山人を雇ってきた。社員の人は給料をもらって仕事を覚えるが、私は給料を払って、人について勉強してきたようなものだ。技術としてはダメでも人間性は抜群という人も沢山見てきた。気持ちはすごく熱心で、責任感も人一倍という人がいたが、病気になってしまった。診断書を見ると心身症だとか自律神経失調症だとかになってしまっている。そのような症状の人を相手にした時、自分の価値観や知識では全く役に立たないことを随分と痛感した。そのような人を理解しようと思ってセラピーの講習を受けたこともあって、相手を納得させようとしたがIMPOSSIBLEである。専門家ではないのだから当たり前の話なのだ。講師の方が言っていたが、心身症にかかる人とそうでない人がいる。私はそのような症状にはなりにくいタイプなのだろう。
 「仕事」---これは、コンピュータという仕事の範囲を超えていない。超えるつもりはない。もし違う事業をやるのであれば、会社を別に作ってやった。あくまで本業はコンピュータのプログラムを作る会社だし、コンピュータに関わった仕事をやるだけだ。しかし仕事を頂くにはどうすればいいか、少しずつわかってきた。
 「お金」---これを血液で例えると、すぐ貧血に陥ってしまう。そうするとすぐ輸血に頼ってしまう。これは楽なのだが、その後にくるのが返済だから、売上が落ち込んだりする時期にぶつかると悲惨である。大儲けのできる事業ではないので、一発逆転はないのだ。薄利をこつこつとかき集めていくことが商いとして一番大事なことだということをもっと自覚しなければいけないができていない。
 そしてどんな場合でもこだわっているのは、続けること。今満足でなくても、必ず上手くいく。そのためには、続けなければ成功を味わうことはない。会社を14年続けた、まだ成功したという思いはない。いい時もそうでない時も必ずある。それを学んだ。今が波でいえば底でも、必ず昇っていく。あと10年した時の波の頂点に立っている、それが私の決意だ。