「素直という能力」

 船井幸雄著の「人財塾」の中で、著者のコンサルティング会社の社員が「一人前とは何か」を述べている部分にあるのですが、「知識や経験があっても、それだけで成績が上がるわけではない。逆に知識不足、経験不足であっても、実際に給料の3倍の粗利をもたらせば、その方がはるかに会社に役立つ人間といえる」。この文章は経営者として頷けるものがあります。
 ナビックはソフト開発会社です。技術者を一人前にするのはなかなか大変だと思っています。技術者にとって、知識があっても経験がなければ、なかなかお客様は要望されない。経験値がひとつの目安みたいなところがあるので、経験があれば安心という気持ちがあるのでしょう。お客様の目安が経験であっても、本当はどのような経験をしてきたかが実は重要なのです。ただ、お客様にはそこまではわからないので、とりあえず使ってみようということになるのだと思います。では、どこまでいけば一人前の経験といえるのかというと、これははっきり言って、個人差がかなりあります。個人差とは何かといえば、お客様に満足できるものを提供しているかどうかで、例えば10年の経験を持つ技術者がお客様に満足できるものを提供しているかというと、そんなことはないのです。特にコンピュータを相手にした技術は、マウスイヤー、ドッグイヤーの世界なので、移り変わりが激しい10年の中で、お客様の要求に応えられる経験を積めたとは限らないのです。その時々で求められるものを提供することが、実は一番大切で、それを敏感に感じ取れる技術者が経験不足を補えると思っています。
また著書の中で、ある社を代表するような社員が言ったこととして、こう述べられています。「仕事をしていると、段取りをよくしろとか、ロスのないようにやれとか、効率ということをよくいわれますが、でも、時間がある時は、いくら効率なんていっても絶対無理です。自分の経験ですけれど、効率よくやろうと思ったら、時間が全くないくらい仕事をガーンと詰め込んでいって、初めて効率って何かがわかる。こんなことをやったら時間が足りないから、これはもう何分で処理しなければならないとか、問題があったらすぐに電話してその場で解決しないと大変な問題にエスカレートするとか、そんな仕事ばっかりだったことが、勉強になりました。それに気づくのに私は3年かかりました」。
結局、もし彼がその仕事から逃げていれば、社を代表するような社員にはなれなかったと思います。
 私は「納期がない」とか「やったことがない」とかいう社員さんには、「やったことがなければやった方がいいよ」、「納期が間に合わなくなるのであれば、間に合わせるにはどんな方法があるのか考えよう」と言うようにしています。著書の中で、ある社長さんがこのように言っています。「人のいうことを何でも鵜呑みにするのは素直ではなく盲信です。人の言うことを何でも疑うのは盲疑です。素直とは、加工前の素材情報を原型のまま受信できるという能力です。性格ではありません。従って、成功できる人は素直という能力を持っていることになります。素直でない人は、成功する能力を持っていないことになります」。
 著書で言われているように、素直というのは能力なのかもしれません。素直という能力を身に付けられる人は、何事においても上手くいくような気がします。