「演劇とコミュニケーション」

 四月になって、演劇を観る機会があった。私の知り合いが出演していることもあって、お付き合いさせていただいた。
劇場そのものは、300人程が入れるぐらいの小さなところで、私が見たのは「ブルースな日々『Oh!神様』」というタイトルの劇だったが、ミュージカルになるのだと思う。その区別もつかないくらい演劇を観たことがないので、良い機会だった。
しかしライブは臨場感といい、その独特の空気といい、ある意味、日常から離れて別な空間に移動して別な感動を受け取れる場なので、新鮮な気持ちになる。仕事が終わってから行けば、精神的にもリフレッシュできたような気分になるのが良い。
 日頃、私は社員さんには、コミュニケーションスキルを付けることを機会ある毎に言ってきたが、そのことを受け止めてもらっても、実際はなかなかできないことを実感として感じ取っている。それでも「声は大きく、自分が言ったことが相手に伝わらなければ、全く無意味だよ」、そんなことを言ってきた。そんなことが、舞台の上では当たり前のように演じられているのには、少しばかりショックだった。
 300人ぐらいの劇場での演劇だったが、役者さんの声は確実に劇場の隅々まで伝わり、しっかりお客さんに届いている。そして沢山の台詞。どれほど練習するのだろう。声を出し、身体を動かし、表情をつくり、演技する。その練習を積み重ね、本番でお客さんの前で演じる。お客さんの前で演じるときには、もう十分に練習を重ねた結果なので感動が伝わってくる。演劇が好きなお客さんにとっては、たまらなく良いのかもしれない。  練習を繰り返し、成果をお客さんに伝える。お客さんは感動し、喜びをその劇から受け取るのだ。コミュニケーションスキルが無いという人も、役者さんのように何回も何回も練習すれば、誰でもスキルがアップするように思えた。
 コミュニケーションスキル云々を私はよく話すのだが、役者さんというのも、お客さんという相手に自分の全てを身体と言葉で伝えるのだから、話し手としてのコミュニケーションスキルはかなりのものじゃないかと思ったりもする。演じることの繰り返しは、やはり表現力を向上させるのではないだろうか。
 演劇とは、お客さんにその劇の感動を伝えるということだろうし、お客さんに喜んでもらえれば良いのだ。「面白くない」「つまらない」「わからない」ということになれば、観に来るお客さんは減るだけだし、収益がなくなれば運営していくことができなくなる。
 どの世界も同じで、お客さんが満足しなければ、売上がなくなるのだし、売上がなくなれば、演劇だろうが会社だろうが、やっていけないのだ。
 今回観た劇の話だが、お客さんを笑わせることに情熱を燃やす座長に付いていこうとする劇団の人たちの物語で、本番前の練習風景から、座長と劇団員とのやりとり、そして本番に至るまでに繰り広げられる団員同士の葛藤や、座長の笑いに対してのこだわりを徹底的に追求している姿を描いている。また、それが「夢」であり、夢は思いつづければ必ずや実現するというストーリーである。タイトルの中の「Oh!神様」というのは、本番が間近に迫っても、なかなか納得のできる台詞が出てこなくて「Oh!神様お力を…」じゃないかと思っている。間違っていたらごめんなさい。
 それにしても、舞台で演じている俳優さんや女優さんというのは、本当に身体全体で表現しているし、声も大きく、迫力あるなあ。人前で話ができないと思っている人は、練習の時に何回も何回も繰り返し台詞を言っている役者さんの姿を想像してみると、勇気が出てくるのではないだろうか。