「お母さんが教える子供の算数」

   「お母さんが教える子供の算数」という本がある(祥伝社,浜野克彦著,ISBN4396313470)。
小学生のお子さんに算数の解き方を教える為に、こうやればもっと楽に計算ができますよ、暗算がしやすいですよ、といったことを教えている本である。
その本の中で面白いと思ったのは、「過去に戻れる」という言葉だ。解らなければ1年生だとか2年生の教科書から始めることで、解るようになるというものだ。
そうなのだ。論理の世界は、解らなくなれば前に戻って基本をもう一度見直すことで、解るようになることが多い。過去に戻れることはすごく良いと思った。
 その本を読んだ後、たまたま保護者参観があったので、小学3年生の授業を参観する機会を得た。算数と国語の授業を参観したが、算数は掛け算で「12×5」を求めるやり方を考えさせる授業だった。まだ筆算は教えられていないので、九九の計算を知っている児童がどう考えるのか興味をもって観させてもらった。答えの出し方もさまざまで、「6×5=30」と「6×5=30」を足して計算してきた子、あるいは「10×5=50」と「2×5=10」を足して計算してきた子、「12×1」を5個書いて全部足して計算してきた子もいた。先生は、これで子供たちが掛け算をちゃんと理解しているかをチェックしているのだ。これらを書いてきた子は掛け算の意味を理解している子だ。
 「お母さんが教える子供の算数」にも、「98×3」は「100×3」から「2×3」を引き算(−)するというやり方で、暗算しやすい方法を教えていた。基本とはこのようなことじゃないかと思う。なぜなら、乗算の意味を知らなければ、98を「100−2」にする発想すら出てこないのだから。計算しやすくするのもひとつの大事な要素なのだ。暗算しやすいと間違いも少ないし、速く計算もできるのだ。そのために数字を分ける。98という数字を100−2で捉えることができるかどうか、それは確かに授業の中にもあった。12を10+2、あるいは6+6で捉えることがそのことだろう。本に書いてあったが、私立中学の入試では算数の計算を速く行うのも、試験のテクニックのひとつのようだ。こうやって観てみると、難しい試験を私立中学で出しているというより、基本を理解していることで発想できる問題を出題しているようにも思えた。
 算数を今さら、と思うかもしれないが、12×5をそのまま計算することは、我々大人には当たり前にできてしまう。忘れてしまったかもしれないけれど、数字を分けて考える発想も時には必要なのかもしれない。
 やたら難しい計算式でも、易しい計算式に組替えることができれば、間違いが少なくなるとか、計算が速くなるとか、メリットはそれなりにある。
 物事が算数のように論理的であれば良いのだが。そうしたら、難しい出来事も実は簡単な式で構成でき、悩まなくて済むのだが。今の私には、何もかもが難しく見えてしまう。13+7+44+16+3+17。これも暗算ですぐ答えを出せるかどうか。左から順番に計算はしないと思うが、これも本の中で解き方を教えていた。小学生の算数の話だったが、経営も同じように難しくて、考えられなければ「過去に戻ってみる」ことができ、そして基礎をもう一度やることで、答えが出せるようなものであればどんなに良いだろうと思った。